研究概要 |
1.毛状根を利用した遺伝子アクティベーションタギング(HR-AT)用ベクターを構築し、その評価を行った。その結果、T-DNAが挿入された近傍の遺伝子の転写産物が、形質転換根でのみ検出され、毛状根を利用した遺伝子アクティベーションタギングが可能であることがわかった。 2.比較ゲノム学的手法を用いて、数種のナス科植物からステロイド配糖化酵素をコードする候補遺伝子断片を単離し、キンギンナスビ由来の3種の遺伝子(SaGT4A, SaGT4R, SaGT6)に絞り込んだ。大腸菌で発現させたタンパクを用い、糖転移活性を検討したところ、SaGT4Aについてのみ、アキュレアチサイドのサポゲニンであるヌアチゲニンを含むステロイドサポゲニンを基質として、UDP-グルコース転移活性を有することが分かった。次に、SaGT4A遺伝子を毛状根用遺伝子抑制ベクターに導入し、このベクターでキンギンナスビを形質転換した。その結果、遺伝子発現が抑制された毛状根クローンを作出することができた。 3.抗アキュレアチサイド抗体を用いて、アキュレアチサイドの迅速な免疫化学的検出法について検討した。その結果、アキュレアチサイドの吸着には、ポリエーテルスルホン膜が適していることがわかった。本膜を用いてアキュレアチサイドの検出条件を検討した結果、アキュレアチサイドA, Bともに約2μgで検出可能であることが分かった。 4.3で作出した毛状根クローンのアキュレアチサイド含量を測定した。その結果、コントロール毛状根に比べ、SaGT4A遺伝子発現抑制クローンでは、約1/5に低下していることが分かった。以上、大腸菌で発現させたタンパクを用いたステロイドサポゲニンの糖転移反応実験、ならびに、形質転換毛状根を用いた機能発現実験により、SaGT4A遺伝子が、植物体においてステロイドサポニンの生合成に関わる遺伝子であることが分かり、本研究目標である、根培養系を用いた免疫化学的手法による代謝関連遺伝子の機能解析を達成することができた。
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