研究概要 |
本研究課題に関する調査は,既にチョウ類に関しては2002年に北岳(山梨県南アルプス市)で実施,2003年には仙丈ケ岳(長野県上伊那郡長谷村)において,チョウ類群集について登山道上のルートを歩いて調査するトランセクト調査と同一地点で終日チョウ類の日周活動と温度・照度・風速の変動を観測する定点調査を行った.また天竜川支流三峰川源流部亜高山帯(長谷村)でもトランセクト調査を実施した.さらに北アルプス乗鞍岳においてもショウジョウバエを中心に昆虫相の調査を行った。 トランセクト調査の結果,三峰川の林道で合計8科36種570個体(1kmあたり26.03個体),源流部で7科29種336個体(8.24),北岳の山地帯で5科18種75個体(4.05),亜高山帯で6科15種164個体(18.43),高山帯で6科14種96個体(5.55),仙丈ケ岳の亜高山帯で6科16種203個体(13.72),高山帯で3科11種246個体(9.18)のチョウ類を確認した.標高が上がるにつれて種数が減少し上位優占種の占める割合が高まり,チョウ類群集の多様性が低くなる傾向がうかがえた.高山植物の開花指数とチョウ類の確認個体数/kmや確認種数との間に有意な正の相関が認められた.定点観測では,5地点の観測地でベニヒカゲなどの希少種の飛翔活動と照度との間に有意な正の相関が認められた.また高山帯と亜高山帯の定点観測の結果,午前10時過ぎには雲やガスが発生し,午後になると日射がほとんど遮られ,チョウ類の活動が急激に抑えられることが判明した.これらのデータをもとに,環境省版および長野県版レッドリスト種とそれ以外の種との比較を行い,希少種に対するモニタリング手法の有効性を検討した.
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