研究概要 |
青森県の東津軽郡平内町ではホソウミニナのセルカリア感染率は72.1%、ウミニナは3.2%で、むつ市大字城ケ沢ではウミニナが78.0%と高い感染率を示し、それらに寄生していたセルカリアにはこれまでには見られない種類も確認された。次に、徳島県阿南市大潟では、ホソウミニナに高い率で寄生していた種は形態学的にも遺伝子の塩基配列でもすべて同一種であった。鹿児島県奄美市住用町山間ではヘナタリの2.5%が感染していたが、大島郡龍郷町浦、屋入川河口のイトカケヘナタリでは感染率は0%であった。しかし、龍郷町久場ではイソニナ、カニモリsp,は0%であったが、イトカケヘナタリの2.4%、リュウキュウウミニナの25%に3種類のセルカリアが寄生していた。沖縄県西表島の白浜の感染率はヘナタリ5.7%、ミツカドカニモリ0%であった。次に、韓国の群山市沃西面玉峰里Sura干潟でセマングム干潟の堤防締め切り後の6月に調査を行った所、ホソウミニナの13.2%に日本で見られる種と同じレジアのが見られたが、堤防締め切り後に貝類と共には死滅した。 これまでの調査結果を基に、日本の各干潟での巻貝類と吸虫類の多様性と希少性を使った新たな指数を考案し、吸虫類にとっての干潟の評価を試みた。この指数はそれぞれの種類数が多い程、また貴重な種がいる場所程高い値になる。その結果、この値は奄美大島の我部井干潟で最大となり、西表島の浦内川河口、奄美大島大浦川河口でも大きく、この3地点が飛び抜けて高かった。それに次で香川県の金倉川、鴨部川河口であった。従って、計算の対象とした43の干潟の内では、これら5カ所が汽水産吸虫類にとって最も重要な生息場所と考えられ、保全されるべき重要候補地だと考えられた。干潟の環境評価には様々な方法があるが、この指数もその1つとして有用であり、干潟の保全に活用できると考えられる。
|