日本の約60地点で干潟に生息する巻貝類に寄生するセルカリア等の吸虫類幼生の種類、寄生率を調べた。干潟により巻貝の生息種類数は大きく異なり、巻貝類が多様だったのは沖縄県名護市我部井干潟、大浦川河口、福岡県曽根干潟、佐賀県田古里川河口であった。調査した巻貝類からは計17種類のセルカリアが検出された。セルカリアの寄生率が高かったのは、浜松市雄踏町のホソウミニナの80%、むつ市城ケ沢のウミニナの78%、西表島浦内川河口のヘナタリの77%、香川県土器川河口の69%等であった。セルカリアの多様性が最も高かったのは、5種類が検出された雄踏町、和歌川河口、浦内川河口であった。また、巻貝とセルカリアの多様性と希少性を加味した指数を作成し計算した結果、奄美大島の我部井干潟で最大となり、西表島の浦内川河口、奄美大島大浦川河口の3地点が飛び抜けて高い値を示した。従ってこれらの地点は汽水産吸虫類にとって最も重要な生息場所であり、最重要保全候補地と考えられた。 タイでは約100地点で主にCerithidea属の巻貝を調べ、感染率は0%の地点もあったが、東部のBan Klong Klaengのヘナタリで最も高く100%であった。タイ全土ではカワアイとヘナタリの感染率はほぼ同程度だったが、共存する地点では感染が一方に偏っている傾向が見られた。セルカリアの多様性が最も高かった地点は、Phuket townのMangrove Research and Development Stationであった。また、3地点でインド洋津波前後の調査を行ったが、セルカリア相及び感染率の有意な変化は検出できなかった。 韓国では7地点で調査したが、セマングム干潟はホソウミニナの感染率が非常に高く吸虫類にとって重要な干潟であると考えられたが、堤防締め切りにより死滅した。また、南部の麗水市猫島洞では巻貝類の多様性は高いが、吸虫類の感染率は低かった。
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