研究概要 |
(1)生息地の孤立化の影響 絶滅が危惧される大阪府と比較的個体数が多い滋賀県において,水田や溜め池を任意に選び,卵嚢の有無を記録するとともに,生息適地モデルにより潜在的生息地を推定し,生息地の孤立化を評価した.卵嚢の発見された生息場所パッチの平均面積は,大阪府では19.8ha,滋賀県では26.8haと大きな差がみられ,3ha以下の生息地パッチでの卵嚢の発見率は3.6%(1/28)であるのに対し,3ha以上のパッチでは31.5%(17/54)で大きな生息地パッチで有意に高かった(p<0.01).これにより生息地の孤立と面積の縮小 (2)メタ個体群構造と集団サイズの縮小の影響 滋賀県大津市の約200haの連続していたが,水田が放棄されことによる植生遷移によって分断が進行していると思われる生息地で産卵数の多い4箇所の産卵場所を選定し,繁殖期に週1-2回卵嚢調査を,春季と秋季に成体の捕獲を行った.産卵場所付近で採集された個体の推定年齢は雄では2歳,雌では3歳の個体が多く,それぞれが繁殖開始年齢であると推定された.また,成体の尾から得た試料からマイクロサテライトプライマーを開発した.開発した9組のマイクロサテライトプライマーのうち、3組のプライマーによって多型が検出された.非常に低いFstの値を示し.この地域的な4集団における分化の程度は非常に低いものと示唆された.しかしながら、それぞれの集団に特異な対立遺伝子が複数観察され、集団間に分化の方向に働く力がかかっていることが確認された. (3)卵期の死亡要因 死亡していた卵からの試料を嫌気培養(Brucella寒天、ガスパック法、OXOID)により培養後生化学的性状検査を行ったところ,Pseudomonas fluorescensとYersinia intermediaと同定された.
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