研究概要 |
メンヨウの放牧に利用されているシバ優占地において,長さ62m,幅0.5mのベルトトランセクトを設置し1m間隔で50cm×50cmの方形区を抽出し,種組成,現存量,土壌硬度,光合成有効放射量などを調査した。出現した維管束植物は30種ノ15.5m^2であった。方形区間の種組成の類似度は最大97%,最小25%,平均60±13%ヤあり,相観では均一性が高く判断されたスタンドにおいても不均一な植生分布が認められた。類似度を基にした2次元の序列では,座標1はチカラシバやオニウシノケグサなどのイネ科植物種の出現に影響を及ぼされ,座標2はススキやコツブキンエノコロなどのイネ科植物種ならびにコナスビやツボスミレなどの小型種の出現に影響を及ぼされた。連続する方形区相互の平均類似度が80%以上である長さ3m以上の箇所、つまり均一な植生を示すパッチが計4箇所認められた。この内,パッチが他の方形区と独立していると統計的に認められたのは,10m長のパッチ1箇所(p<0.001)と4m長のパッチ1箇所(P=0.013)の合計2箇所であった。この2つのパッチ間相互の独立性は認められなかった(P=0.077)。Shannonの種多様度指数(H')と光合成有効放射量との間に負の相関が,土壌硬度との間に正の相関がそれぞれ認められた。さらに光合成有効放射量と土壌硬度の間には正の相関が認められた。加えて,オランダミミナグサ,チドメグサ,ツボスミレ,ネザサなどは光合成有効放射量との間に負の相関を,一方土壌硬度との間には正の相関を有した。土壌硬度を踏圧の指標として考えた場合,日陰となる領域に休息のため家畜が訪れる頻度が高くなり,これが上記の踏圧耐性の高い小型植物種にとって優位に繁殖するための適度な植生の攪乱となり,その結果として種組成が多様化したと考えられた。
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