研究概要 |
ミヤコザサ(Sasa nipponica)が分布する半自然草原において,家畜による採食利用が植物種多様性に及ぼす影響をその他の植生の利用管理条件と比較して検討した。草原植生を利用管理条件の違いにより,1)放牧利用(G)区,2)採草利用(M)区,3)火入れ管理(B)区および4)放棄(A)区の4スタンドに層化した。ミヤコザサの優占度(E-SDR_2)はA区(100.0),B区(41.2)およびM区(8.9)の順に高く,G区において本種は出現しなかった。ススキ(Miscanthus sinensis)のE-SDR_2はB区(83.3),A区(55.2),M区(31.3)およびG区(1.7)の順であった。G区においての優占種はシバ(Zoysia japonica)でそのE-SDR_2は54であったが,A, BおよびM区においてそれぞれ本種は出現しなかった。維管束植物の出現種数(種/5m^2)はM区(58),G区(50),B区(47)およびA区(24)の順であった。種多様度指数H'(bit)はM区(5.3),G区(5.1),B区(4.7)およびA区(3.2)の順であった。平均群落高(cm)はA区(109.1),B区(59.7)およびM区(23.4)の順に高く,G区においては9.3cmと最も低かった。このように,火入れによる立枯れの除去や,採草および放牧による剪葉は,ミヤコザサやススキなどの大型種の優占度を低下させ,種組成を多様化させた。特に採草および放牧は植生の適度なかく乱となり,火入れ管理のみよりも種組成を多様化させることが示唆された。また,A区とG区の種組成が最も類似性が低く,両区間を0〜100の極スタンドとした一次元序列においては,B区およびM区はそれぞれ28.9と56.4の座標に位置した。このように放牧利用は植物種組成に対し採草利用や火入れ管理と異なる影響を与えることがうかがえた。
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