研究概要 |
阿蘇地域の半自然草原において,多様な植生タイプや植物種組成の多様化が生じる過程を把握する目的で,家畜による採食利用や無機環境が植物種多様性に及ぼす影響をlandscapeレベルからfeeding siteレベルにおいて検討し,以下の成果が得られた。 1.特にススキ(Miscanthus sinensis)およびミヤコザサ(Saas nipponica)が優占する半自然草原においてlandscapeレベルの試験を遂行した。火入れによる立枯れの除去や,採草および放牧による勢葉は,大型イネ科種の優占度を低下させ,植物種組成を多様化させた。放牧利用は植物種組成に対し採草利用や火入れのみの管理と異なる影響を与えることがうかがえた。 2.放牧に供されているネザサ(Pleioblastus chino var. viridis)が優占する植生ならびにシバ(Zoysia japonica)のが優占する植生において,それぞれfeeding siteレベルの試験を遂行した。植物種組成は家畜の採食利用性や無機環境(土壌や光)の空間的不均一性が影響していることが示唆された。例えば,家畜が高頻度に訪れる場所では植物群落がかく乱され,踏圧耐性の高い小型植物種にとって適当な環境が提供されその結果として種組成が変化した。また,特定の植物種間で空間分布に関連性が認められる事例も見出された。 3.GPS,顎運動センサおよび心拍センサを用いて放牧家畜の食草行動と植生の関係を解析し,植生の被食頻度などの時空間分布や植生構造と食草行動の関係などが明らかになった。 半自然草原においては,多様な利用管理方法が多様かつ適度なかく乱となりlandscapeレベルからfeeding siteレベルまでの各階層において草原生態系を複雑に多様化させることが示唆された。
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