研究課題
基盤研究(C)
ロマは、文字記録を持たなかった民族であり、そのため、ロマに関する記録は、非ロマによる偏見や誤解に充ちたものであることが多い。これは、チェコのロマについても同様である。チェコにロマが到達したのは、13世紀〜14世紀と考えられるが、迫害の歴史が始まったのはその後間もなくである。16世紀以来、為政者はロマの追放を試みたが、18世紀後半からロマの同化・定住化を図った。第一次世界大戦後は法による「管理放浪政策」、ナチ・ドイツ占領期には絶滅政策、社会主義政権下では再び同化・定住化政策がとられた。現在は共生政策がとられているが、多文化政策といえるかどうかは難しい。近年になって、チェコのロマ自身が自らの歴史を語り、書く機会が増えてきた。一つは、1980年代から始まったホロコーストに関するオーラル・ヒストリーの収集によるものである。ロマ自身による文字記録が稀な中で、オーラル・ヒストリーの意義は大きく、ホロコーストに関する記録のみならず、それ以前のロマの状況について知るためにも有益な資料である。また、ロマ系の歴史家としてダニエル(故人)やホルヴァートヴァーが、ロマの歴史を書いてきた。後者は、ロマ文化博物館の館長で、発足時の博物館スタッフはチェコ人が多かったが次第にロマ中心になってきている。現在、チェコのロマに関する様々なプロジェクトが行われている。非ロマのロマに対する偏見や攻撃は根強いが、2004年からインターネット上で、非ロマ向けのロマに関する啓蒙・教育プログラムが始まった。ロマと非ロマの共生には、両者に対する教育が重要であるが、非ロマに対する教育活動がようやく始まったことになる。そのほか、2002年に市民団体によるロマ・ショップが開店し、ロマ関連のCD・民芸品・書籍などに一般の人々や観光客が触れる機会が増した。また、伝統音楽に限らないロマ系音楽家への注目も増してきている。
すべて 2005 2004 2003
すべて 雑誌論文 (13件)
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