フランスの他の地域やカナダ以外のフランス語圏諸国における少数民族や少数言語の文化変容ならびに政治的統合形態について調査をおこなった。 フランスの他の地域は、本国(ヨーロッパ大陸でのフランス)のピレネー山脈西部に位置し、スペインとの国境によって「分断」されたバスク、海外地域では南太平洋のフランス領ポリネシアを対象とした。ともに「地域語」と呼ばれるフランス語以外の言語についての政策と社会言語学的現状を明らかにした。ただし、これらの成果については、時間の制約や資料の不十分さもあって、公表できないでいる。本研究期間終了後に何らかの形で公表するべく、現在、調整中である。 フランス以外のフランス語圏諸国については、アフリカ大陸とその東に位置する大きな島嶼国マダガスカルの間に挟まれたモザンビーク海峡にある小島嶼国コモロ連合共和国の言語状況と1975年以降の紛争と一部の島嶼の独立運動、そしてフランス語圏共同体(フランコフォニー国際組織)やアフリカ連合の介入、調停による和平樹立と、その後の「連邦化・連合化」について調査し、その成果を日本島嶼学会の年報である『年報島嶼学』に投稿、掲載した。 もう一つは、フランス語圏共同体(フランコフォニー国際組織)のフランス語圏アフリカ諸国における少数言語・文化政策について調査を行った。主に、セレール語などのフランス語圏アフリカ諸国におけるフランス語以外のアフリカ諸語の教育・デジタル化政策、アフリカ諸語で制作されるテレビ番組やラジオ放送支援事業、映画のフランス語字幕添付、販路拡大、受賞支援政策が対象である。 さらに、昨年度に引き続き、上記のフランス語圏の創設者でありその政策や理念の主柱的役割を担ったセネガルのレオポルド=セダール・サンゴールの思想について、主に著作集『リベルテ』によって明らかにした。ただし、これら二つの調査については、時間の制約もあって、現時点では公表にはいたっていない。数年中に何らかの形で公表する予定である。
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