研究概要 |
本研究課題の研究一年目にあたる今年度は、まずアメリカ合衆国の国民形成・国民統合、人種主義に関わる「国民化」「人種化」関連の研究文献の収集に努めた。とりわけ南北戦争以降のアメリカ・メディア萌芽期にあたる再建期に注目し、その時代に大きな社会的影響を与えたイラスト入りジャーナリズムの文献の整理に多くの時間をかけた。その結果、『ハーパーズ・ウィークリー』誌を中心に、トマス・ナストの画像のデータベース化の作業を進展させることができ、国民意識と人種主義という二つの軸を中心に、その複雑な意識形成にメディアが果たした役割について、大まかな見取り図を描けることとなった。さらに、当初予定していた夏ではなくなったが、3月12日より30日まで、アメリカ合衆国のワシントンD.C.,バークレー、ロサンゼルスでリサーチを実施し、スミソニアン博物館、全米日系人博物館、南北戦争・朝鮮戦争・ヴェトナム戦争等の戦争記念碑および展示を調査し、デジタル・カメラ等でデータを集めた。イラク戦争の戦後処理の只中にあるアメリカでは、ブッシュ政権による同時テロの悲劇の政治利用が非難されるなど、市民の死、悲劇の報道のされ方が問題となったが、同様に社会に大きな影響を与えたイメージとして、南北戦争による兵士の死を象徴する「血染めのシャツ」というシンボルについての調査の必要性も浮かび上がってきた。
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