本研究では、計画の初年度として、以下の3つの領域に渡る研究を実施した。すなわち、(1)調査活動、(2)学会などにおける活動、(3)研究成果の公開である。(1)については、特に2003年12月から2004年1月にかけて、バングラデシュ及びインドでの調査を行った。本研究に関連する文献の収集とともに、バングラデシュでは聖者信仰に関わる近年のバングラデシュ社会における様々な動向を調査した。特に、近年の政党組織による宗教政策の実態を調査し、そのイスラーム化政策における聖者信仰の位置づけについて資料を収集した。(2)については、本年度は国内学会として日本民族学会、日本南アジア学会に参加した。国際学会として、イタリアで開催された国際人類学・民族学会議に参加し、最新の動向についての資料を収集した。(3)については、別紙のような研究成果の出版を行った。特に、『バングラデシュを知るための60章』では、「イスラームの近代」、および「イスラーム教とヒンドゥー教」と題して、バングラデシュ社会における聖者信仰を紹介しイスラーム理解におけるその意義を論じた。また、「バングラデシュにおける宗教的マイノリティの現状と課題」では、バングラデシュにおける宗教と政治の関連を位置づけ、従来の宗教的シンクレティズムなどの観点では、同国の宗教的ナショナリズムなどの新たな動向を理解するためには十分ではないことが確認された。
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