研究概要 |
本年度は、研究計画の最終年度にあたり,バングラデシュを中心としたこれまでのフィールド調査の総括と、インド、バングラデシュ、及びパキスターンを中心に収集された関連資料の整理を行った。資料収集としては、10月にアメリカのウィスコンシン州マディソン大学で開催された、アメリカ南アジア学会に参加した。ここでは、中世以降のベンガルにおけるイスラーム化の研究に関する著名な研究者であるRchard Eatonとの情報交換を行うとともに、南アジアのイスラームに関する様々なワークショップに参加した。また、マディソン大学は、北米でも有数の南アジア研究に関する資料を収集していることで知られており、この大学図書館において関連資料の収集を行った。 また本年度は、研究の最終年度として、国内外の学会・研究会などでの研究成果を行った。 特に、関西大学で開かれた日本宗教学会では、「ベンガルの聖者信仰におけるヒンドゥー・ムスリム関係-シンクレティズム論再考」と題して報告を行った。これは、3年間の本研究での最終的なまとめの報告として、従来、ヒンドゥー文化とイスラーム文化の習合現象(シンクレティズム)が強調されてきたベンガルの民衆文化を捉える視点を、これまで集中的に調査を行ってきた、東バングラデシュの習合的な特徴を備えた聖者廟、モノモホン・ドット廟の事例を通して再検討を試みた。結論的には、民衆文化のシンクレティズムの諸相を記述する既存の観点では、反シンクレティズムの運動を十分に捉えきれないという問題が指摘され、シンクレティズム論を捉えなおすための、それに代わる文化の動態を記述するための新たな視点が提示された。この報告にっいてはその後、論文にまとめられ、学会誌『宗教研究』に投稿しており、すでに2006年6月に出版が決まっている。 その他、本年度は、多数の学会・研究会での報告を行っている。8月には中国の上海社会科学院の主催による国際アジア研究学会でインド農村社会の構造について、9月には広島大学の研究会でバングラデシュの聖者廟の社会的問題について、11月にはアメリカのニューヨーク州立大学にて、バングラデシュの宗教問題について、また同月には、東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所の共同研究会において、バングラデシュの聖者廟とポストコロニアリズムの問題にについて、12月には、インド・ニューデリーの国際インド宗教学会にて、インド農村社会におけるヒンドゥーを中心とした儀礼と女性の問題について、2006年の1月には、国立民族学博物館の主催によるシンポジウム・「地域開発の未来」において、バングラデシュの聖者廟の観光開発をめぐる問題について、それぞれ報告を行った。 このように、本年度は、成果の集大成と報告の時期として、多数の学会報告を行うとともに、研究成果のまとめを行った。
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