研究課題
基盤研究(C)
グロバリゼーションの進展の一方で市場統合の動きが世界各地で起こっているが、本研究は輸送・エネルギー・通信等のインフラストラクチャ(経済・社会基盤、以下インフラ)の整備が地域統合深化にどのような意味をもつのかを、メルコスル(南米南部共同市場)を結成している南米南部地域を事例に考察することを目的としたもので、その第一段階の成果として以下の点を挙げられる。1.市場統合の進展に応じて国境を越えたインフラの統合を推進しようとの機運が2000年以降、南米諸国に急速に高まっており、これが「南米地域インフラ統合計画」(IIRSA)として具体化に向け動き始めていること。2.IIRSAにおいては、複数国をまたがる形で10の「統合・開発軸」が考案されると同時に、従来、モノ・ヒト・カネの移動上で支障となっていた制度等を7つの分野に分け、国境における円滑な通過など改善策の検討に入っており、1980年代までのナショナリズムや輸入代替工業化時代には想定されなかった新しいコンセプトが多数見られること。3.中でも、ブラジル、アルゼンチン、チリ、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビアの拡大メルコスル地域(南米南部)は、経済力にして南米の7割を占め、市場統合を推進する上でインフラ統合がカギとなっている点(具体的には、(1)天然ガスパイプラインのネット化、(2)輸送システムとしての鉄道の復活、(3)通関システムの民営化・外資化の事例、(4)地方自治体間の市場形成に向けた協議等)が現地調査で確認され、そうした意識の高揚が把握されたこと。4.拡大メルコスル地域においては、軍政終焉・民主化を背景とした国家間の「信頼醸成」→「市場統合」→「インフラ統合」、さらには「地方経済の統合」という流れで概ね進展していると想定され、こうした状況を背景に、国民国家の枠を超えた地域公共財(regional public goods)としてインフラを整備することが地域統合の進展にとって重要になっていること。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
海外事情(拓殖大学海外事情研究所) 52・12
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