本年度は、採用が秋になり、10月から研究開始ということで研究が始まったのが遅くなっているため、申請を申し出たときに予定していた研究を全て遂行することはできなかったことをあらかじめお断りしておかなければならない。 本研究は、「ロシアにおけるジェンダー研究-エスニシティーの視点より-」という研究である。研究代表者も、これまでロシアのジェンダーを分析する際に、ロシア人とその他の民族、特に宗教的に大きな影響を受けているムスリムの人々との間の意識差などは全く考慮してこなかった。しかし、ロシア連邦の中にも多くのムスリムが共存しており、ロシア人という場合にこのムスリムの存在を考慮する必要がある。従って本研究では、ロシア内のムスリムが争い、タタールスタン共和国も調査対象としている。 本年度は、ソビエト時代に編入前についてのジェンダーに関する資料を中心に収集することを行う予定であったが、具体的な古文書がどこにあるのかを調べる時間がなかったために、古文書での資料収集はできなかった。具体的に行ったことは、まず、以前に所有していたこの研究に関係する英語、ロシア語、日本語の文献を分析し整理することである。しかし、以前から所有していた資料だけでは少なく、3月20日から29日までロシアのサンクトペテルブルグにあるサルティコフ=シチェドリン図書館にてタタールスタンにおける男女の役割分担とその空間についての資料を収集した。渡航期間が短いこともあり、収集できた資料の数はまだ少なく、今後さらに資料収集を行う必要がある。 また、現地におけるインタビュー調査を行うことが必要であるが、テロなどの影響もあり、インタビューに答えてもらえる被験者の数も少なくなるのではないかと心配している。今後、特にカザン市における被験者を探すことが大きな課題である。
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