本研究では、タタルスタン共和国のカザン市におけるジェンダーの現状に焦点を当てて分析を行っている。その際に歴史的な側面にも若干触れている。帝政ロシア時代、ソビエト時代ついて俯瞰している。 研究方法としては、過去の分析には主に文献資料を用いている。現状の分析では、文献資料と、筆者がカザン国立医科大学の協力の下に実施した意識調査(アンケート調査、面接調査)の結果を用いている。 アンケート調査は2005年5月〜6月にカザン市において18歳以上の男女497人に実施した。この調査は、旧ソ連のグルジア、ウズベキスタンで行ったジェンダーに関するアンケート調査とほぼ同様の内容ある。また、面接調査は女性に対して2回実施した。1回目は、2005年2月22日〜26日にカザン市で企業家、社会団体組織の代表、ジェンダーの専門家、戸籍登録所の職員(ザックス)、政府機関職員、カザン市役所職員等に対して行った。2回目は、2006年2月26日〜3月3日に専業主婦、学生、大学教員、教師、企業家、ジェンダーの専門家、新聞記者等に対して行った。それらの調査資料を用い、現在のタタルスタンのジェンダーの状況を明らかにしている。この作業は多民族国家ロシアの社会の行方を探ることに大きく寄与するものと確信している。 報告書全体の構成は、まず、タタルスタンにおけるジェンダーについて、帝政時代、ソビエト時代、ソ連邦崩壊以後について検討している。次に、タタルスタンの現在の家族政策と女性団体について、述べている。そして、2005年、2006年のタタルスタンにおける現地調査について分析を行っている。最後に、今後のロシア国内におけるタタルスタンのジェンダーの行方について予測している。
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