「翻訳としてのバイブル・ウーマン」という研究は、キリスト教研究、宣教師研究においてさえ、まだあまり研究の進んでいないこれら女性たちの活動を、女性史的に捕らえるとともに、その文化的役割の検討を目指したものである。今年度は、まず、数少ない文献を求めて、宣教師を送り出したがわであるアメリカの調査を行った。2003年8月にイェール大学神学部において資料調査を実施し、主として、バイブル・ウーマンの起源、特にアジア地域の宣教における女性の問題、それに関連した女性宣教師とその補助者としてのバイブル・ウーマンの活動を記録した、宣教師もしくは教団側の資料を収集した。宣教師およびバイブル・ウーマンの活動に不可欠であったと思われる英米語両表記の聖書の資料も得ることができた。2004年2月には、共同研究者ヴィクトリア・ムサロン教授を招聘し、ハリエット・カーペンターの書簡におけるバイブル・ウーマンの記述についての情報の交換を行うとともに、日本におけるバイブル・ウーマン養成所のひとつであった神戸の聖和大学と、その隣の神戸女学院を訪問し、日本側の資料収集を行った。これらの資料によって、これまでの研究成果、アジアの他の地域と日本との比較対照、女性の自立の問題、文化的橋渡しとしての役割、さらにはポストコロニアリズム的視点の問題、などについて、ある程度の考えをまとめる準備ができた。 この成果を発表し、かつ様々な関連問題の研究者と議論し、理解を深めるために、2年目である来年度に千葉大学文学部主催で国際コロキアムの開催を計画し、現在準備が進んでいる。日本の近代化と女性の技能による自立について討論する予定である。
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