研究課題
基盤研究(C)
本研究は、合衆国での資料収集や、ジェンダー・セクシュアリティの理論の摂取を通じて進められた。共産主義封じこめという冷戦時代の外交政策は、実は国内政策においては共産主義者のみならずゲイ・レズビアンなどを逸脱者として排除して「結婚した異性愛カップル」の核家族を文化規範とすることに裏打ちされているという認識を大衆文化分析、ゲイ・レズビアンの社会史や「公式化」を背景にした作家分析などから展開した。具体的には、越智は新批評を中心とするアメリカ文学のカノンの再編成とアメリカの文化政策、さらにそれがどのようなジェンダー化を受けたものとして生産・流通し、消費され、冷戦時代のジェンダーの再配置に寄与するか、という点に着目し、そうした文脈に照らしてトルーマン・カポーティの伝記を執筆した。また、ジェンダー・セクシュアリティの歴史と理論を摂取した成果として、19世紀末から20世紀にかけて異性愛が規範となる過程とアメリカの帝国主義的拡張の関係を、英語論文"Why Is He a Southerner?"および「南部の男」、「拡大する家庭」で検証したほか、「フェミニズムが変えた社会」においては合衆国の第2派フェミニズム以降のフェミニズム運動と社会の流れを概観、批評した。吉川は冷戦時代に大量に出回ったレズビアン・パルプという大衆小説の一ジャンルおよびゲイ・レズビアンという存在の冷戦下における意味を「異装のロマンス」において解き明かし、レズビアンの証言を描いた映画Forbidden Loveを異性愛の規範と照らし合わせつつ論じた。
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