今年度は、父親の育児休業に関するヨーロッパの新しい動向を中心に資料を収集し、関係主体に聞き取り調査をした。 フランスでは、従来、育児休業制度はあっても給付金が少なく、第一子には給付されず、職場の理解が得にくいなどの理由で、女性ですら育児休業が取得しにくかったが、近年、父親手帳(un livret de paternite)の配布と11日間の出産時有給父親休暇の制度が導入されるなど、父親も含めた両親の育児休業取得を促進する方向に少しずつ向かっている。 ノルウェーは、育児休業期間を拡大する機会を捉えて、1993年に世界で初めて「パパクォータ」を導入したが、その後、保育所不足を背景に、在宅児童手当を導入し、労働市場の周辺部分に位置する女性労働者層が仕事を辞めるという後退現象も起こっている。 一足遅れて1995年に「父親の1ヶ月」を導入したスウェーデンでは、その政策効果をふまえて更に2002年に父親月を2ヶ月に拡大し、その分全体の育児休業期間を拡大した。また在宅児童手当を創設せず、保育所の量的質的改善を原則的に進め、普遍主義的保育・教育制度の拡充につとめている。その他にも、ジェンダー政策の地道な進捗が見られた。 北欧のジェンダー研究機関であるNIKK(在オスロ)では、北欧5力国のジェンダー政策について研究者から話を聞くことができ、クォータ制の特徴や意義と限界を認識した。ヨーロッパ社会全体に、父親の役割への関心は高まっているが、父親の育児を促進する諸政策のジェンダー効果については、日本と同様に、慎重な分析が必要である。
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