2004年4月から11月にかけて、女性どうしのパートナーシップに関する調査研究として、レズビアン、クイア関係のスペースやインターネットのサイトを利用しインフォーマントを募った。その結果、27名からお話を伺った。カップルでのインタビューは9組、残り9名は単独でのインタビューである。インフォーマントの年齢は23歳から46歳まで、居住地地域は、北海道2名、東北1名、関東12名、東海2名、関西1名、中国5名、四国1名、イギリス在住1名、申告なし2名であった。職業は、公務員、教職関係、医療関係者が多かった。 家計に関しては全ての人が収入を得ていた。すなわち、経済的自立をしている人が大半であった。その上で、収入に応じて家計分担をするケースが多い。具体的には、「収入に応じて分担」が7組、「平等に分担」が5組、「別会計」が2組、「主に一方が負担している」が2組だった。 家事分担に関しては、「主に一方が担っている」が6組、「平等に分担」が5組、「状況によって適当に分担」が3組、「お互いの得意分野をそれぞれに分担」が1組だった。家事分担の結果だけを見ると、どちらか一方のみが担う場合が多い。しかし、「主に一方が担っている」と答えている場合でも、自分の得意とするところと相手の得意とするところで分担するというような、得意・不得意によって分担されている場合が多い。いわゆる「男役-女役」「タチ-ネコ」といった「性別役割」関係は、調査事例の中では少数派であった。その具体的なありようとしては、「ネコ」に家事全般、身の回りの世話をしてもらい、収入面での面倒を主にタチがみる、というケースが多いようである。 周囲へのカミング・アウトはかなり慎重である。特に職場の同僚に対しては絶対にバレないように配慮し、信頼できる相手を見極めた上でカムアウトをしている。原家族に対しては、実際に同居生活していること自体がカミング・アウトにつながる側面が大きい。ただしその場合も、「同性愛」「レズビアン」という言葉ではなく、「私は○○ちゃんと結婚しているようなもの」「××さんが男性だったら結婚している」といった間接表現が用いられている。全般的に、レズビアン・アイデンティティを強調するのではなく、異性とも交際や結婚をしてみたが、今現在の自分は女性である特定の個人をパートナーにしているといった認識・表現が多く見られる。また、レズビアンというアイデンティティ自体を持っていない人もいる。 最後に現在の社会制度に関しては、住宅を購入する際に共同名義でお金を借りることができない、(日本人の)養子をもらうことができない、女どうしでは結婚できないため、特にパートナーが外国人の場合、一緒に暮らすことが困難、などの問題が挙げられている。
|