研究課題
家事・育児・介護分担に関する研究が多数報告される中で、生計維持分担に関する調査は十分になされてきたとは言えない。しかし生計維持と家事・育児・介護分担は、いわばコインの表と裏の関係になる。生計維持分担があいまいなまま家事・育児・介護分担のみを議論するのは等式の一方のみを取り上げるに等しい。生計維持者には、仕事を辞める選択肢がない。生計維持責任を果たすということは、長期にわたり働き続ける覚悟をするということである。つまり雇用は、生計維持の必要条件ではあるが十分条件ではない。生計維持においては、単に仕事をするという行為だけが問題なのではなく、仕事をする行為の"意味"が問題なのである。本研究では、夫と妻の雇用に付与される意味に着目し、フルタイムで継続就業する共働き夫婦30組へ聞き取り調査を実施した。調査の結果、同じようにフルタイムで継続就業する共働き夫婦といえども生計維持分担意識はさまざまであり、妻の雇用に生計維持の意味を付与している生計維持分担意識の高い夫婦と、そのような意味を付与していない分担意識の低い夫婦が存在することが明らかになった。分担意識の低い夫婦においては、生計維持者たる夫の仕事が妻の仕事より優先され、家庭と仕事の両立が問題となるのはもっぱら妻の方であった。これに対し、生計維持分担意識の高い夫婦は、2人がともに生計維持者として就業を継続できるよう働き方を調整していた。これは、夫婦両者の就業に一定の制約をもたらす一方で、生計維持責任を1人で負担しなくてもよいが故の自由度も与えていた。前者の夫婦は、どちらかと言えば旧来型の企業中心の生活を送る傾向が見られたのに対し、後者の夫婦は、脱企業中心のライフスタイルを希求するケースが多く、働き方やライフスタイルが一部の階層で夫婦の選択となってきていることが示唆された。
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2004 Work, Employment and Society Conference Manchester
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Anthropology of Japan in Japan 7^<th> Annual Meeting(上智大学)