本年度は、前年度に国内外で収集したサッポーの虚構的表象関係、女性同性愛関係、セクシュアリティ関係、ジェンダー関係などの基本的資料・文献・刊行物をより一層充実させるとともに、これらの資料等のデータベース化と緻密な分析の作業を進めた。そのうえで、本年は特にサッポーとイギリス女性詩人とセクシュアリティの問題や、イギリス・ロマン主義時代における女性の同性愛と「ロマンティックな友愛」の言説に焦点を当てて研究し、その成果の一部として、平成16年5月23日大阪大学での日本英文学会第76回全国大会にて「『ルイーザ』におけるロマンティックな友愛」という題で口頭発表を行った。前年度にイギリス・ロマン派学会創立30周年記念論集に投稿した英文の論文"Anna Seward and the Sapphic Tradition"は審査の上採用され、平成17年3月にVoyages of Conception(共著)として出版された。また、ロマン主義時代におけるセクシュアリティとジェンダーの関係の一様相を明らかにするために、アイルランドからイギリスへ駆け落ちをして50年以上も一緒に暮らしたランゴーレンの貴婦人たちに関する当時の言説のうち二人の女性の「エデン的」な清い友愛を示す言説を分析・考察した論文「ロマン主義時代のセクシュアリティとジェンダー-ランゴーレンの貴婦人たち(1)」を紀要『人文科学論集』第75号に掲載した。続編の(2)では、二人の関係をセクシャルとみなした言説を分析し、平成17年7月に公表される予定である。 本研究の最終年度である来年度は、収集した資料・文献・刊行物の総括的で詳細な分析に取り組み、イギリスにおけるサッポーの受容やイメージの変遷とジェンダーの構築、セクシュアリティ間の諸問題について多角的に考察し、本研究の目的を達成する。また、本研究の国際的評価を獲得するために、研究成果を国際学会での口頭発表や英文の論文の形で公表する予定である。
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