本研究の最終年度である本年度は、これまで国内外で収集した資料・文献・刊行物のデーターベース化と総括的で綿密な分析の作業に取り組み、近代イギリスにおけるサッポーの受容やイメージの変遷とジェンダーの構築、セクシュアリティ観の諸関係、女性同性愛とロマンティックな友愛、男装によるジェンダーの攪乱、「女の兵士」や「女の夫」などについて多角的に考察し、本研究の目的を達成した。具体的には、前年度の研究の継続として、ロマン主義時代のランゴーレンの貴婦人たちの関係をめぐるセクシュアルな言説と画像イメージを分析した論文「ロマン主義時代のセクシュアリティとジェンダー--ランゴーレンの貴婦人たち(2)」を紀要『人文科学論集』(第76号)に発表した。また、本研究の国際的評価を獲得するために、予定通り、イギリスのグラスミアで開催された国際ワーズワース学会にて、平成17年8月8日に、"Anna Seward as the British Sappho"という題でサッポーと呼ばれたイギリス女性詩人アンナ・シーワードの詩的言説について論じた口頭発表を行うとともに、シーワードの物語詩『ルイーザ』における18世紀末の女性の同性愛と「ロマンティックな友愛」の言説に焦点を当てた英語の論文"Romantic Friendship in Anna Seward's Louisa"を平成18年3月、日本英文学会誌英文号Studies in English Literature(第47号)に公表した。その他国内における口頭発表としては、平成17年9月5日に、近代思想史研究会(於:名古屋大学)において、「18世紀のセクシュアリティー-サッポーを巡って」という題で18世紀イギリスにおけるサッポーの受容史をセクシュアリティ観の視点から捉えた発表を行い、社会思想研究者たちと意見の交換をした。
|