本年度の資料収集と整理及び資料分析は、主に以下の3点にまとめられる。 (1)昨年度から継続していた『河北新報』の関連記事索引が完成した。さらに本年度は『宮城県教育会雑誌』の関連記事索引の作成に着手した。作成に並行した記事分析の結果、女性スポーツの拡大(=変革)という点で1920年代が画期であることが予想される。 (2)雑誌『国民体育』の全目次・主要記事概要索引が完成した。『明治神宮体育大会報告書』の分析から、初期の大会主催者は女性スポーツの現状把握に乏しく、大会が進む(別言すれば、地方からの参加拡大)につれて女性スポーツが大きな位置を占めるように展開したことが判明した。 (3)日本講道館及び米国での調査により以下の2点が女性スポーツを歴史的に把握する上で要になることが判明した。(1)米国での女子バスケットボール関連の資料収集から、タイトルIXを契機とした1970年代の女子の男子用ルール適用は一面で歴史的事実であるが、実はローカル的には多様な歴史的経緯をたどっていることが資料的に実証可能かも知れない。とすれば、日本の歴史と比較すると、このスポーツで「進んだ米国、遅れた日本」という構図ではなく、米国と日本が時期的に同時進行、否、日本が先取りする形で男子用ルールに変わったという歴史認識ができるかも知れない。(2)日本講道館及び福田敬子女史(柔道8段、サンフランシスコ在住)からの聞き取りを含めた資料収集から、戦前の女子柔道は男性スポーツに女性が参入したという点で変革であったが、運動様式や運動目的(理念)の点で伝統的女性規範をすり込む歴史展開をみせた可能性がある。日米比較と日本の伝統的スポーツの中の女性像の探求、転機としての1920年代の歴史把握は平成17年度の大きな課題である。
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