今年度は、近現代哲学と表象、エクリチュール、想像力、情念について、基本的な文献・資料を整えつつ、主として3つの方向から研究を進めた。第1は、近代西洋とくに17世紀を中心として、表象、主体、イメージ、エクリチュールなどの問題をデカルト、ライプニッツの哲学を出発点として、これら具体的諸問題と哲学の関連を示す作業を始めた。第2は、これに対応するかたちで、日本の近代におけるエクリチュールと主体の問題の検討を始めた。第3に、やや限定的に、デカルト『情念論』と精神、情念、表象、機械論のテーマで研究を行った。 このうち第3のものは、成果の1部を論文にまとめることができ、次ページの雑誌論文リストに記した.第1と第2のテーマも進行中で、西洋17世紀と日本近代をつなぐ主題として、主体、表象、メランコリー等の具体的糸口が明らかになりつつあるので、次年度には、いくつかの論文として、具体的な成果をまとめあげる段階に入れると思う。 エクリチュール、表象のテーマで共同研究をつづけている、パリ第7大学エクリチュール研究センター所長アンヌ=マリー・クリスタン教授とは、同教授の2003年11月の来日(東京大学C.O.E.による)の折、研究セミナーに参加し意見・情報の交換を行い、さらに個別的に、研究経過の話合いなどを行った。 2003年12月には、研究課題のうちの最終テーマの一環となる、西洋近現代哲学と非西欧文明との差異に関連して、チュニジア国カルタゴ11月7日大学との共同研究のため、チュニジアを訪れ、打ち合わせや調査を行った。 なお2月7日から3月末の間は、フランスを訪れ、上記クリスタン教授、およびパリ第1大学オリヴイエ・ブロック教授との共同研究を続行し、あわせて、国立図書館やソルボンヌ図書館での資料収集を行う.これにより、最初に示した3つのテーマについて、論文の仕上げへ向かう。
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