本研究は、近現代哲学における表象とエクリチュールについて西洋近代の基盤を明らかにし、さらに日本近代の諸問題とのつながり、そして東洋(オリエント)へと視座をひろげた。概略は次のようにまとめられる。 1 デカルト哲学を出発点として魂と情念、その機械論との接合を明確にし、そのうえで、西洋近代の表象と主体の問題の根幹に踏み込んだ。また、現代哲学へのつながり(今回はメルロ=ポセティとラカン)も明きらかにし、そこにおけるデカルトとライプニッツの対比も行った。 2 表象の諸問題を、魂、精神、実体を軸にして、デカルト、スピノザ、ライプニッツ、マルブランシュなど17世紀ヨーロッパ哲学相互のつながりと差異を明らかにした。実体・魂・精神はさらに、宗教と関わり(特にライプニッツとスピノザの関連において)、そこから反宗教地下文書が扱われた。 3 西洋近代の基礎となるこうした諸点を踏まえて、日本の近代、つまり明治以降の糖神、主体、表象の問題が、エクリチュールとの関連で具体的にとらえる.主体・精神の問題を基礎とし、漢字や仮名のエクリチュールと主体についての関連が明らかにされた.そこから、主体・精神・エクリチュールと病について、考察がなされ、問題の根源は西洋近代の始まりにもつながることが示唆された。 4 視点をひろげてこの主題群が、日本、東洋(オリエント)、デカルトのCogitoにまで問題の連関をもつことを示すとともに、主体・経験・そして文明へと問題の源を探っていった。和辻・西田の提起した点を基礎にして、デリダ、フーコー、デカルトについて論及し、そして東洋(オリエント)への視座を求めた。
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