1 資料の調達、整理、購読 ライプニッツ・ヴォルフ哲学の後継者エーベルハルトとの対決を考察するための主要なテクストは、Philosophische BibliothekのDer Streit mit Johhann August Eberhardに収録されているが、これに収録されていない『哲学雑誌』(Philosophisches Magazin)および『一般文芸新聞』(Allgemeine Literatur-Zeitung)の資料をAETAS KANTIANAおよびマイクロフィシュにて調達、整理した。 本年度は、まず『ラインホルト宛書簡』を通読して論争の争点を見極めた上で、エーベルハルトの『哲学雑誌』第一巻の諸論文とカントの『発見について』を読み進めている。 2 理性概念の再検討 合理主義批判の再検討を適切に行なうには、「理性」概念の再検討も避けて通れない。カントの理性概念を、特にVerstandとの対比において、哲学史的伝統を振り返りながら再検討することによって、いわゆる「VernunftとVerstandとの逆転」問題の修正案、および、a Priori概念との関係から見た理性の二義性の理解を提示した。 3 ヴォルフ的合理主義の源流 ヴォルフ的合理主義の源流を見定めておくことも、本研究にとって有益であろう。そこで、前批判期のカントが「概念」と「物」との関係を合理主義的に説明しているテクストが、まさに合理主義の始まりに位置するデカルトの『第五省察』の解釈になっていることに注目し、このテクストの意味を明らかにし、さらには、同様の思想がデカルト自身のテクストの中にも確かに読み取れることを確認した。
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