研究課題
基盤研究(C)
研究期間中に、フィヒテ『1794年の知識学』、シェリング『人間的自由の本質』、ヘーゲル『大論理学』を精読した。本研究の狙いとして、これら三人の哲学思想の底流にスピノザ、カントとの関連を探り、それがそれぞれの自由論、価値論にどのような影響を及ぼしているか、スピノザを経てカントが直面した価値ニヒリズムを彼らがどのように受け止め処理したか、を探るつもりであった。この観点からすると、率直に言ってこの三年間の研究の到達点は、期待にはほど遠いものであった。まずフィヒテのこのテキストには価値ニヒリズムに関連するような記述が断片としてすら見いだすことができなかった。フィヒテの他の時事的な文献からそのようなニュアンスを読み取っていたので、この点は意外かつ落胆した。次にシェリングについていえば、このテキストは結局は価値ニヒリズムの回避の試みであるといえるとは思うが、スピノザ、カントとの関係を匂わす文脈をここに発見することができなかった。最後にヘーゲルのこのテキストは聞きしに勝る難解な書で、意味を追うだけでも辛酸を極めた。しかも価値論に関係しそうな論述を見いだすことができなかった。ということで、本研究の主題的仮説は間違っていないと思うが、今回は選んだテキストが適切でなかったと反省している。反面、副次的な成果は多々あった。まず、フィヒテは思ったほどにはカントの「純粋統覚の外界への自己実現」論を真正面から受け止めていないこと、逆にヘーゲルの弁証法はフィヒテの論理展開の仕方と紙一重であること、シェリングの神論は単純なキリスト教護神論とはいいきれないこと、ヘーゲルは『大論理学』の概念論への導入の箇所でスピノザを高く評価しており、またカントについて随所で適切な批評を下していること、を発見したことは大きな成果であった。というわけで、「ドイツ観念論と価値ニヒリズムの問題」という研究テーマでの仕事は、私にとって仕切り直しとなった。今後中長期的に探求していきたい。
すべて 2006 2005 2004 2003
すべて 雑誌論文 (6件) 図書 (2件)
近きに在りて-近現代中国をめぐる討論のひろば 第49号
ページ: 57-69
民国後期中国国民党政権の研究(中央大学人文科学研究所編)(中央大学出版部)
ページ: 415-451
1930-1940年代中国の政策過程(ワークショップ報告書)
ページ: 15-25
重慶国民政府史の研究(石島紀之, 久保亨編)(東京大学出版会)
ページ: 235-256
現代中国研究 第14, 15号
ページ: 16-28
歴史学研究 第779号
ページ: 18-24