研究概要 |
本年度は、哲学的観点と科学史的観点から、「知識と実践」の関係を考えるうえで重要な論者を取り上げて検討した。具体的には、プラトン、アリストテレス、ベーコン、デューイ、ブリッジマンなどをとりあげ、操作主義の問題、知識と価値、科学と技術、知識と倫理、の関係などの問題を検討した。とくに、村田はデューイに見られる知識の「創造性」という観点を取り出し発展させることによって、1)科学と技術の関係に関して、応用科学説とは異なった仕方での応用を重視する見方のあり方、2)技術と倫理の関係に関して、単なる既成の規範の応用としての倫理という意味での「応用倫理」とは異なった仕方で考える可能性などを取り出した。その成果は、「科学哲学会」(2003年11月)のワークショップ「技術の哲学」や、駒場で行われた国際シンポジウム「プラグマティズムと技術の哲学」(2003年12月)で発表された。また,岡本は、ブリッジマンの操作主義の歴史的背景を探ることによって、通常理解されるブリッジマンの「操作主義」概念の理解には多くの偏りが存することを示した。具体的には、ブリッジマン自身は操作主義概念が実験の領域の理解に寄与するとは考えていなかった点、また、科学と社会の関連を必ずしも重視せず、むしろ、「科学はプライベイトな営みである」という独特の理解を持っていた点が明らかとなり、こうしたブリッジマンの独特の科学理解が操作主義概念の発展に一定の制約として働いたことが明らかとなった。
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