本年度は、第1に、環境正義とかかわって深めてきた共生理念について現段階での考察を英文論文(Kyosei and Sustainable Society)にまとめて、国際誌(Year of the Artificial)に寄稿し、5月に発刊予定である。また、オーストラリアに出張した際に、環境哲学の新たな構想を提起しているアラン・ゲイ教授とこの英文論文をもとに有意義な議論を行うことができ、大いに互いに共感し、ゲイ教授が近々創刊号を予定している雑誌への寄稿を依頼された。第2に、環境正義の日本的な独自性を探求するために、日本思想の文献研究及び調査研究を行った。文献研究に関しては、安藤昌益及び田中正造の研究を環境正義論との関係で行い、欧米での環境正義論との比較を考慮に入れて論文にまとめた。また、昨秋、水俣訴訟で画期的な判決が出たこともあって、現地水俣市での聞き取りを中心とした水俣問題の現状調査を二人の博士課程の院生とともに行った。第3に、環境思想の背景となる人間観について考察を深め論文にまとめたが、雑誌の特集「21世紀の人間論」の巻頭論文になる予定である。また、30人近くの研究者の協力を得て、編著者の一人として『環境思想のキーワード』(仮称)を近々発刊予定であるが、この際にも本研究の成果が反映された。第4に、情報技術との関連では、札幌学院大学にて開催された、現代の情報・メディア問題をテーマにしたシンポジウムにて、他の研究者との学際的な議論を通じて本研究のテーマを深めることができ、この成果は同大学の紀要に掲載予定である。
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