本研究の最終年度として理論的に深めるために、本研究と密接に関わって発足した環境思想・教育研究会を機会として、日本での環境正義論の研究の第一人者である戸田清教授、また環境政治学で新刊書を出された丸山正次教授、また環境哲学の三浦光永教授を招いて、若手研究者を交えたディスカッションを通じて本テーマの研究を深めることができた。特に、環境正義と共同体の関係の問題について考察を深めることができた。また、日本哲学会の日中哲学交流の実行委員会責任者になった関係で、日中シンポジウムなどの研究交流を私自身の研究テーマとの関連で位置づけ、環境思想に関心をもつ多くの中国の哲学者などとディスカッションができたことは有意義であった。 また、調査研究に関しては、これまでのアメリカ・サンフランシスコや韓国・釜山での「自然の権利」訴訟の調査研究の結果を確認し、比較研究を深めるために、日本での最初の「自然の権利」訴訟について若手研究者とともに調査研究をしたが、原告団長の園博などからも詳細な聞き取りができた。その結果、日本でのこの訴訟運動の独自の性格を確認でき、環境正義の運動の一環としての位置づけをすることができた。 なお、本年度は、最終年にあたるため、成果のとりまとめとして13人の若手研究者の論文・翻訳等を掲載した報告論文集の発刊をした。また、本研究を核とした単著『環境思想と人間学の革新』(青木書店)を著した。
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