研究課題
基盤研究(C)
本研究は「<制度化された母性>から<母の領域>へ」の主題において倫理学とフェミニズムのの対抗的対話を開こうとするものである。家父長制からの解放を女性の自由や自立の課題におくフェミニズムからは、パターナリズムも母性も否定視またタブー視の対象とされ、リベラリズムの徹底化に向かうフェミニズムと人間存在の関係性や共同性を問う倫理学とはしばしば対抗的な関係に立たざるえない。母性や身体をめぐるテーマの構築主義と本質主義の対立を超えた議論の土俵をどう作るか。本研究のひとつの目的は、フェミニズムの側にマイナーな流れながら存在する「差異派フェミニズム」の中にある「母」の主題、さらに家父長制的パターナリズムに回収されない「ケアの倫理」の可能性に向けた問題意識を提示することにある。もう一つの「倫理学と想像界」の課題設定からは、精神分析理論における想像界・イマジナリーな領域への関心が拓かれる。フェミニズムと精神分析との「くされ縁的」関係を超えた薪たな関係において、フロイト・ラカンの批判的読みを通し、象徴界の言語・法に先立つ想像界にまで遡って女性主体登場の意味生成を問う。現代社会における女性の主体形成の困難さ、アイデンティティ・クライシスの生命の危機に及ぶ深さは、想像界・象徴界両側から女性を生き難くさせている背景に考察が向けられる必要があると考えるからだ。とはいえ「イマジナリーな領域の倫理学にとっての意味と課題」については本研究ではまだまったくの課題提示にとどまってしまった。「フェミニニティと現象学的身体論批判--女性身体の謎へ」のテーマで受けた科研費研究において引き続きの課題としたい。
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アジア太平洋におけるジェンダーと平和学 vol.4,
ページ: 159-176
Ajia Taiheiyou ni okeru Gender to Heiwa-gaku [Gender and Peace Studies in Asia Pacific] Vol.4
ページ: 159-178