平成16年度の計画の中心は、プラトンの『パルメニデス』における異他性の概念を検討することと平行して、無名氏(P.Hadotはポリピュリオスの著作と見ている)の『パルメニデス註解』とプロクロスの『パルメニデス註解』の解読を進めることにあった。予想した通り特にプロクロスの『パルメニデス註解』の解読は困難を極めたが、プロクロスにおいてプラトンの異他性の概念が継承され、深化されていることを確認できた。研究成果の一部は来年度に論文として発表する予定である。しかし以上の研究はまだ途上にあり、さらに来年度も継続して行うつもりである。 異常の研究を遂行する傍ら、本研究の射程に入っているクザーヌスにおける異他性の概念についても調査を進めたが、本年度開催された日本クザーヌス学会での質疑を通じて本研究に有益な示唆を得ることができ、来年度の研究への展望を開くことができた。 研究テーマに関する写本調査と資料収集として2004年10月27日から11月12日までドイツ連邦共和国バイエルン州立図書館(ミュンヘン)を中心に行い、特にカロリング朝期の論理学関係の写本調査と新プラトン主義哲学関係の資料の収集において所期の成果を得た。そのほか国内においても資料の収集を行った。 平成16年度立命館大学哲学会での「自然概念の哲学史的変遷について」と題するシンポジウムに薗田担、有福孝岳両氏とともにパネラーとして参加し、これまでの研究成果の一端を発表した。シンポジウムを通して本研究を多くの研究者に知ってもらうことができたし、またそこでの議論や意見交換によって新たな示唆や刺激を得た。 活字になった研究成果は別表の通りである。
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