研究概要 |
本年度は西洋古代中世哲学における「異他性」の概念のうち、昨年度から引き続いてポリピュリオスとプロクロスに関する研究を行ったが、いずれもギリシャ語と思想内容ともに難解で、残念ながら努力した割には期待したほどの進捗を見なかった。特にプロクロスについては『パルメニデス註解』のさらなる分析が課題として浮かび上がった。しかしポリピュリオスとプロクロスに関しては平成18年3月に来日したJohn Dillon教授(Ireland, Dublin, Trinity College)と意見交換ができたことは有益であった。また教授からはポリピュリオスとプロクロスについて新しい研究文献の教示を受けたので、来年度の研究に生かしたい。 本年度はまた偽ディオニュシオス・アレオパギテス、マリウス・ウィクトリヌス、アウグスティヌスにおける異他性の概念も検討した。これら三人の思想家についての研究は所期の進展があったと思う。偽ディオニュシオス・アレオパギテスについては研究を論文にまとめるまでには至らなかったものの、相当の進捗を見ることができたが、マリクス・ウィクトリヌスについては研究は困難を極め、まだ論文にまとめる以前の段階に止まっている。アウグスティヌスにおける異他性の研究は幸いに進捗し、論文として発表することができた。 研究課題に関する資料収集を国内外で行ったが、特にカナダのSimon Fraser UniversityとBritish Colombia Universityの図書館での資料収集では貴重な成果があった。中世文化史の専門家である;Paul Dutton教授(Simon Fraser University, Burnaby, Canada)との意見交換で偽ディオニュシオス・アレオパギテス、マリウス・ウィクトリヌス、アウグスティヌス、それに特にエリウゲナやカロリング朝の思想文化について多くの教示を得たことは本研究にとって非常に有益であった。
|