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2004 年度 実績報告書

デリダの芸術論における他者性と責任概念が有する倫理学的意義の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15520013
研究機関静岡大学

研究代表者

上利 博規  静岡大学, 人文学部, 教授 (20222523)

キーワードデリダ / 芸術 / 他者 / 責任 / 倫理 / 表現 / 美学 / 合わせ鏡
研究概要

デリダの芸術論は初期エクリチュール論と後期の政治・社会論を結ぶ位置にあり、中期芸術論における表現(rendre、返済)と他者性の関係の解明は、美学・芸術論一般に対して新しい視角を与えると共にデリダのエクリチュール論と政治・社会論の双方のより深い理解を与える。美学や芸術制度を支えている基本的枠組(cadre)に対するデリダの脱構築的アプローチがいかなるものかを『絵画における真理』を手掛かりに明らかにした昨年の研究成果を踏まえ、今年度は一つには『盲者の記憶』を中心にして(1)「見えないものの手探り」としての描画、(2)自画像について考えた。またもう一つは『視線の権利』を中心にして(1)写真における見えないもの、(2)撮影者の特権的位置を脱構築する「合わせ鏡構造」(mise en abyme)などについて考えた。
これらから以下のことが明らかとなった。(1)デリダの考える芸術表現とは創造ではなく、初期エクリチュール論において提示されているような「痕跡(trace)」「原エクリチュール」への「逆向きの生成(創造)」である。(2)「痕跡」は自画像のような「合わせ鏡構造」における無限の織り込み・振幅という非感性的な「深淵」(abyme)として生じる(=場をもつ)。ここから、写真撮影者も含め創造主たる作の特権的位置も剥奪され、作者は「合わせ鏡構造」を作り出し、所与の誕生以前(pre-natal)の「痕跡」という「自然性の他者」へと向う。(3)芸術表現(rendre)は、契約的諸関係や権利・義務関係に先行する「痕跡」に対ずる「前-起源的信頼性」という負債の返済(rendre)の遂行である点に、その他者性や責任概念の倫理学的意義があり、後期デリダの歓待論や友愛論への架け橋となっている。
なお、以上のデリダの芸術論に基づき、近代化と批判的自己意識の生成という点から静岡やアジアの芸術・芸能文化の変容の調査も並行して行なっている。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2005 2004

すべて 雑誌論文 (5件)

  • [雑誌論文] 近代化における自画像としての中国映画2005

    • 著者名/発表者名
      上利 博規
    • 雑誌名

      アジア研究(静岡大学人文学部) No.1

      ページ: 1-31

  • [雑誌論文] 芸術・芸能文化から見た伊豆の歴史と現代2005

    • 著者名/発表者名
      上利 博規
    • 雑誌名

      伊豆の歴史と文化の創造(静岡大学人文学部)

      ページ: 1-23

  • [雑誌論文] 「駿府に残された戦前と戦後の音楽事情」、「清水の芸能文化」、「伊豆の芸能文化」2005

    • 著者名/発表者名
      上利 博規
    • 雑誌名

      駿府・静岡の芸能文化(静岡大学人文学部) 3

      ページ: 1-37

  • [雑誌論文] 非現前的表現としての自画像2004

    • 著者名/発表者名
      上利 博規
    • 雑誌名

      静岡大学人文学部人文論集 55-1

      ページ: 13-28

  • [雑誌論文] デリダ、写真と他者のエクリチュール2004

    • 著者名/発表者名
      上利 博規
    • 雑誌名

      文化と哲学(静岡大学哲学会) 21

      ページ: 1-23

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公開日: 2006-07-12   更新日: 2016-04-21  

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