研究概要 |
今年度は、マクタガートの「時間の非実在性」論の批判的検討を中心に据えて、拙著『時間は実在するか』(講談社現代新書)の研究成果をさらに先の段階へと進める考察を行った。加えて、時間の量的な側面についても、「時間をはかる」という事象における「基準」の問題へと焦点を絞って探究を行った。 論文「時間と矛盾--マクタガートの「矛盾」を書き換える--」においては、(1)時間と矛盾という問題設定の中での、マクタガートの議論位置の確定、(2)A系列とB系列を二つの別個の系列として切り出すことの失敗、(3)時間系列外のXが、どのように働くか、(4)時間特有の変化は、どのように特殊か、(5)矛盾は、どこに見だされるべきか等を考察し、矛盾の「書き換え」を三通り提示した。 論文「時間の推移と記述の固定--マクタガートの「矛盾」に対する第一の書き換え--」では、(1)「時間に本質的な変化」が「時制の根底性」によっては馴致されないこと、(2)マクタガートにおける過去・現在・未来の「両立可能」と「両立不可能」の相克を、A論者やB論者とは別様に(交差的に)解釈すべきこと、(3)時制なき時間の変化においてもマクタガート問題が回帰すること等を論じ、時間固有のリアリティを示唆する方向の議論を行った。 哲学会・第43回研究発表大会(東京大学,2004年11月6日)において、「時間における「基準」の問題」というタイトルで、「物差し運動論」(小川弘)を論じ、(1)「第三の運動」の忘却、(2)基準と計量空間の関係、(3)基準の相対性の隠蔽、(4)「あいだ」という持続のあり方について考察した。
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