平成17年度は、先行する過去二年間の研究助成によって収集した文献の翻訳、整理を中心とする作業を行った。主として平成16年3月と7、8月のモスクワ滞在において、ロシア国立文芸文書館で収集したV.S.ソロヴィヨフの自筆草稿の各種を解読し、これをロシア宗教思想研究、中でもロシア・ソフィオロジーの基礎資料として蓄積している。その具体的な成果の一つとしては、昨年度から「エイコーン 東方キリスト教研究誌」において、ソロヴィヨフの仏語草稿「Sophie」と「La Sophia」の注釈つき翻訳を継続的に掲載していたものを、今回、助成年度の終わりということで総括して一冊にまとめた。「Sophie・La Sophia-ソフィアに関する草稿-」として、新世社から3月末に出版される。また、今のところ活字化には至っていないが、ソロヴィヨフの他の著作群の中からまだ邦訳がないもの(『全的知識の哲学的原理』、『抽象原理批判』、『神の概念』等)について、研究助成で入力補助をしてもらった原稿の訂正加筆を現在も遂行中である。これらについてもいずれ出版を目指している。また、三月下旬に国際宗教学宗教史会議第19回世界大会で「"中道"の普遍的意義について」と題して、本研究のテーマに直接関連する発表を行ったほか、大乗仏教の中道性とロシア宗教思想、就中、ソロヴィヨフの中道的精神との比較思想の論文(現在はオランダのソロヴィヨフ研究誌に掲載予定の英文論稿の作成中)を様々な機会をとらえて発表すべく努めている。 また、ロシア科学アカデミー東洋学研究所のT.P.グリゴーリエバ教授との共同研究も継続中で、現在本研究者が手がけている教授の論稿「芹沢光治良"神シリーズ"について」の翻訳が三月中には終了する予定である。
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