当該助成期間中に実施した研究の第一に挙げられるのは、平成16年3月と7、8月にモスクワのロシア国立文芸文書館において文献収集を行い、19世紀末ロシアの哲学者V.ソロヴィヨフの自筆原稿を始めとする相当数の文献を発掘収集し得たこと、またそれらの一部を改題翻訳し得たことである。ソフィアに関するソロヴィヨフのその仏語草稿の一部は、"エイコーン"誌29号、30号、33号に掲載され、そのあと、助成最終年度に一冊にまとめられ、『Sophie・La Sophia-ソフィアに関する草稿-』の表題のもと、新世社から出版された。 また平成16年度から開始したロシア科学アカデミー付属東洋学研究所のT.P.グリゴーリェヴァ教授との共同研究も序々に成果を上げつつあり、まずはロシア宗教哲学と日本仏教を比較思想的に究明する本研究者の露語原稿がChelovek誌2004.no.6 Moscowに掲載された。続く論稿の翻訳作業も現在進行中である。また教授の日本の宗教性についての論稿の邦訳も既に本研究者によって終了している。 学会発表としては、平成16年8月にロシア科学アカデミー東洋学研究所が主催した第37回国際アジア・北アフリカ研究会議(ICANAS-37)の仏教学部門において「大乗仏教的観点から見たV.ソロヴィヨフの形而上学的世界観」と題して発表(露語)を行った。また平成17年3月には国際宗教学宗教史会議第19回世界大会においては、本研究の課題に関連して、「"中道"の普遍的意義について」と題しての発表を行っている。その他、複数回の講演を含めての国内外での活動を通して、本研究の目的の実現に向けて研究実績を積み上げてきている。
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