研究課題/領域番号 |
15520025
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
荻野 弘之 上智大学, 文学部, 教授 (20177158)
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研究分担者 |
大橋 容一郎 上智大学, 文学部, 教授 (10223926)
田中 裕 上智大学, 文学部, 教授 (70197490)
渡部 清 上智大学, 文学部, 教授 (00053661)
勝西 良典 上智大学, 文学部, 助手 (70384162)
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キーワード | 仏教とキリスト教 / アウグスティヌス / カント / 自由 / 道徳心理学 / 宗教哲学 / ドイツ観念論 / 意志 |
研究概要 |
本研究の3年目(平成17年度)は、個人研究と合同研究の両面で、それぞれの研究分担領域での着実な進展をみた。大きく3点にまとめて報告する。 (1)古代後期における「意志」概念の成立。 前年度の研究は、アウグスティヌスの内面的倫理思想の分析としてさらに進展を加えた。正戦論の祖とされるアウグスティヌスの聖書解釈を検討することで、十字軍以降、盛期中世スコラ学における自然法に基づく正戦論(ヴィトリア、スアレス)との相違、特に愛を中心概念とする内面的倫理が、暴力の正当化に対して懐疑的に機能する面を明確にした。この成果の一部はボン大学欧州統合問題研究所から英文の報告書として刊行されたが、さらに一橋大学でのCOE企画にも招待されて、法学、政治学の研究者とも意見を交換することができたのは収穫であった。これは次年度草々に成果が出版刊行される予定。(以上担当:荻野) (2)カント哲学およびドイツ観念論における「根源悪」の問題。 昨年度から文学部助手・勝西良典氏の参加を得て、カントの行為論及び倫理学に関して進展をみた。定言命法をめぐる「意志の自律と他律」の問題圏が、現代哲学で問題とされる他者論に対して整合的に機能しうるのかどうか分析が加えられると共に、この観点からフィヒテとの橋渡しについても従来のカント理解を修正する試みが検討された。(以上担当:大橋/勝西) (3)近代日本の宗教哲学における自我論の受容と変容。 西田幾多郎の中期以降の哲学におけるフィヒテなどドイツ観念論の影響とその超克を正確に跡づけることを課題として研究を進め、さらに西田以前の明治期の思想家、清沢満之など親鸞思想との関係なども視野に入れて近代日本の思想的問題を仏教哲学のある形式として把握する構想が熟しつつある。(以上担当:田中/渡部)
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