明治時代の国民道徳運動には、さまざまな潮流がある。政府・文部省・宮内省を中心とした官側の動向は、教育勅語の編纂となって結実した。民間の動向は、西村茂樹が組織した日本弘道会を足場に、生涯にわたって精力的に推進した運動が代表であろう。 西村の主要著作は3巻本の全集におさめられ、その事績も詳細な伝記に記されている。しかし彼の活動は、これらの著作によって網羅できるものではない。国立国会図書館の未定稿の西村文書をはじめ、全国各地の図書館・文書館・資料館などに、うずもれた史料が大量に残されている。 本研究は、西村を中心とした国民道徳運動の全体像を、新たな史料を掘りおこすことで解明することを課題とする。本年度は、国会図書館・東大明治新聞雑誌文庫・慶大情報センター以下、石川県・新潟県・長野県など、西村ゆかりの地の史料調査をすすめ、その成果を『増補改訂西村茂樹全集』第1巻第2巻(思文閣)におさめるとともに、関連論文をまとめ学会に報告した。
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