1.三島淑臣先生古稀祝賀論文集『自由と正義の理念』(ホセ・ヨンパルト・田中成明・竹下賢・笹倉秀雄他編、成文堂、2003年7月)に、『法と倫理の内的関連』問題の再検討-カントの『実在する人間の存在論的根基(Radix) 』に迫る-」と題する論文を発表した。この論文は、法哲学界の重鎮である三島淑臣教授がその主著『理性法思想の成立-カント法哲学とその周辺-』(成文堂、1998年)で残した問題について、問題そのものの本資を解明し、私の最新の『判断力批判』研究および『人倫の形而上学』研究の観点から、教授の問題提起に答えた。 2.憲法学者の樋口陽一教授(早稲田大学)およびK・コリネク教授(ウィーン大学教授兼オーストリア憲法裁判所長)、法哲学者の酒匂一郎教授(九州大学)およびG ・ルーフ教授(ウィーン大学)との討論を経て、第10回国際カント学会(2005年9月)での発表原稿 'Philosophische Begrundung der "Achtung des Individuums" und des "allgemeinen Wohls"(Art.13 der japanischen Verfassung)nach Kant'〔訳「カントによる『個人の尊重』と『公共の福祉』(日本国憲法13条)の哲学的基礎づけ」〕(A4用紙10頁)を完成させ、国際カント学会事務局に申請した。同論文は、(1)世界の憲法における日本国憲法の特長、(2)カント批判哲学による「個人の尊重」「公共の福祉」の哲学的根拠づけ、(3)カント人格論の新解釈による「人間の尊厳」論の再検討、(4)日本国憲法の普遍性(国際性)と今日的意義の解明、これら4点を論ずるものである。
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