研究課題
前年度の研究の総括として、「日本国憲法13条の形而上学的考察-カント研究から」と題して東京法哲学研究会(平成16年5月例会)で研究報告をおこなった。その後、政治学者(豊下樽彦教授)および社会哲学者(フンボルト大学名誉教授H・クレナー博士)と直接討論をおこない、考察を進め、次の3点を明らかにした。(1)「個人の尊重」(日本国憲法13条)の問題は本質的に「恒久平和」(日本国憲法前文)の形而上学的解明の問題と不可分の関係にあること、(2)カントの平和論は、最近のEUの情勢からみて、現代の世界政治にとって特に示唆に富む政治哲学であること。(3)この政治哲学によって日本国憲法前文の精神を哲学的に根拠づけることが確実になるとともに、その今日的価値をいっそう明確に説明できること。折しも、チュニジア共和国でカント没後200年を記念する国際学会"Kant, les Lumieres et nous"があり、主催者から講演を依頼され、これを機に、以上の研究成果を"Kant and the Constitution of Japan-The significance today of Kantian pacifism identified in the introduction of the Constitution of Japan-"と題してまとめ、発表した。その内容は、「啓蒙」「法の支配」の研究に好材料を提供する研究として、アラブ諸国の研究者に高く評価された。同国際学会の最終日に新たな国際学会Societe Mediterraneene de Philosophie : Averroes et Kantの設立が宣言されたが、その発起人の一人として、国際平和実現のための一翼を担うことになった。以上の研究成果は、「カント批判哲学による『恒久の平和』(日本国憲法前文)の形而上学的解明」と題して『法の理論24』(成文堂、2005年)に掲載される。また、上記国際学会での講演原稿は、2005年中にチュニジアで出版されることになっている。
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法の理論24(ホセ・ヨンパルトほか編)(成文堂)
Kant, les Lumierres et nous Les actes du colloque international, Tunis, 8-11 decembre 2004