本年度は、清代に書かれた伝記資料・学術的著作をはじめとする各種の文献資料の中から、当時の幕府と学術の関係を考察するうえで参考となる文章を抽出し、それらを電子テキスト化し、分類整理する作業を行なった。具体的作業過程は次の通り。 1.清代において多数の学者を幕友として雇い学術プロジェクトを実施した幕主として、徐乾学・盧見曾・盧文〓・朱〓・畢〓・謝啓昆・院元ほかを選別。 2.それらの幕主の下で働いた学者百名以上を抽出。 3.上記の学者の伝記資料を中心に、幕府での活動実態を窺わせる資料を摘出し、それらを電子テキスト化した後、分類整理。 現在、3.の作業に取りかかっており、この作業は次年度以降に引き継がれるが、完成までにはかなりの時間が掛かることが予想される。 以上の作業から得られたデータに分析を加えた結果、清代の地方の高官たる幕主が主宰する学術プロジェクトにおいては、多くの場合、幕主は名前を出すだけで、実際の編纂作業は、幕友として雇われた未仕官の学者によって為されている場合が多いことが明らかとなった。また、学術プロジェクトが一つの幕府から別の幕府へと引き継がれることもあり、その場合の学術情報の伝達において、幕友が重要な役割を果たすことも明らかとなった。 上記の作業及び考察をもとに、幕府が実施した学術プロジェクトの実施状況の一端を紹介するため、論文「院元と『十三經注疏釋文校勘記』」を著した。この論文は、本研究成果の一部として、平成16年3月刊行予定の『中国哲学』第32号に掲載される。
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