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2006 年度 実績報告書

近代中国における国学の研究

研究課題

研究課題/領域番号 15520037
研究機関富山大学

研究代表者

末岡 宏  富山大学, 人文学部, 助教授 (10252404)

キーワード中国 / 国学 / 日本 / 西洋文化受容 / 中体西用論 / 和魂洋才
研究概要

清末における西洋政治思想、とりわけ「天演論」つまり社会進化論の紹介者として知られている厳復(1854-1921)について研究した結果次のような結論を得た。
1.従来中国の伝統学術の評価に対しては、当然否定的であると捉えられ、初期の厳復は、全面的な西洋化(全般西化)を主張し、中国の伝統学術を否定したが、中期・晩期にあっては伝統文化に回帰し「保守化」「反動化」したと評価されたとされて来たが、初期の論集において否定されるのは、西洋の科学技術・文化を安易に伝統的学術と結びつけようとする、附会論を批判しているのであって伝統的学術を否定しているのではない。
2.初期の著作においても厳復は中国の伝統学術を論拠とすることはあり、それは人類共通の普遍的な事柄というレベルで共通するものがあると考えている。
3.厳復の中では、人類共通の普遍的な事柄というレベルの基盤を措定し、その上に個別性をもち互いに相容れない、中学の体系と西学の体系が存在している。
また、所謂「附会論」「中源論」は、清末の中体西用論者がはじめたのではなく、清朝初期の天文学・数学を受容する際に主張されたものを踏襲しており、必ずしも当時の政治情勢から強要されたものではないことがわかった。
従って、従来否定的に捉えられて来た、「中体西用論」「附会論」「中源論」は、当時の知識人階層の知の体系における「自己のもの」=「正しいもの」というパラダイムでは、伝統的な中学の体系に、西学を位置づけようとすることが当然の所為であって、否定的に捉えるべきではないことが判明した。
従来の日本で誤って捉えられた原因は、日本の近代化においては全般西化が即伝統学術否定であったことによる。日本の明治中末期の国粋主義(国学)は、全般西化=伝統学術否定が大勢となった現状に対するアンチテーゼであったが、その主張を受容した中国にあっては伝統学術否定というプロセスを経ていないため、伝統的な知の体系の補強という意味合いを果たしたのである。従って中国の国学の誕生は日本の国学に対する一種の誤解に基づいている。また中国の「国学」の伝統的学術に対する同一性・近似性は、中国の知の体系において全般西化=伝統学術否定というプロセスが存在しえないことを示している。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2007

すべて 雑誌論文 (1件)

  • [雑誌論文] 厳復の中体西用論批判について2007

    • 著者名/発表者名
      末岡 宏
    • 雑誌名

      富山大学人文学部紀要 第46号

      ページ: 89-99

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公開日: 2008-05-08   更新日: 2016-04-21  

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