研究概要 |
今年度の成果は、本研究テーマを従来の仏教研究史上に正確に位置づけるために行われたマクロな視野からの考察と・本テーマを遂行するための個別研究に分けられる。後者はさらに、基礎資料作成、ならびに三昧と仏教、如来蔵思想と仏塔信仰の解明の三点となる。前者から述べる。 本研究は中期大乗経典の代表である涅槃経の解明を進めるために、深い関連が指摘されながらもまったく解明の進まなかった方等泥?経を文献学的に解きあかすことを目的としているが、本研究代表者は、そもそも大乗仏教の研究成果の正確な位置づけ作業について、現在までに学界で作りあげられてきた仏教史の理解がさまざまな面で妨げとなることを強く感じてきた。現在のこの状況にあっては、個別文献の解明は、仏教研究方法史の解明と同時に進めていかなけばならない。今年度は、大乗仏教在家仏塔起源説が日本の研究者をめぐる社会的風土のなかで作られていったかを中心に分析し、成果をUCLA(USA), American Academy of Religion大会のそれぞれで公表した。(発表題目Liberating Ourselves from Modernity : Some Reflection on Buddhist Studies in Japan) 後者については、いまだ校訂テクストのないチベット語訳テクスト'Phags pa khye'u bzhi ting nge 'dzin shes bya ba theg pa chen po'i mdo,*Aryacaturdarakasamadhisutraについて、北京版、デリゲ版をもちいて校訂テクストを作った。また、三昧と大乗経典、如来蔵思想と仏塔信仰の関わりについて従来から進めていた調査をまとめ、ロンドン大学(発表題目:Tathagataagrbha Theory and Stupa Worship)、英国仏教協会(発表題目:Brahma's Entreaty to the Buddha to Teach)で発表した。
|