日本においても中国においても、京都学派や新儒家など近代哲学の形成に当って仏教が大きな役割を果たしてきたが、その両方を視野に収めた研究は従来十分になされていない。本研究はその点に関して研究を進め、広くアジアの思想の近代化と仏教の関係を解明するために寄与することを目的とした。具体的には、平成15年度には数回の研究会を開いて、国内の関連する研究者の発表をもとに討論し、平成16年度には、海外の研究者ブライアン・ヴィクトリア氏と葛兆光氏を迎えてシンポジウムを開いて、討論を行なった。また、研究代表者の末木は、数回にわたり海外で研究発表を行なったが、特に平成16年11月に北京で行なわれた第1回中日仏学会議では、近年大きな問題となっている本覚思想や批判仏教を中心に、それが近代の中国・日本思想とどのように関係するかという点をめぐって、議論がなされた。 このような成果をまとめて、研究成果報告書を編集した。これには、上記の研究会やシンポジウム、海外研究の成果を可能な限り盛り込んだ。即ち、研究代表者と分担者の論文だけでなく、上記の葛兆光氏の論文(和訳)やヴィクトリア博士の論文(英文)などを含め、全体で7本の論文を収めた。また、近代中国を代表する仏教雑誌『海潮音』(1920-49)は、2003年に復刻が出されて研究が可能となったので、本科学研究費によってその復刻版を購入した上、その目次データベースを学生の協力を得て作成した。これは今後の中国の近代仏教研究の基礎となるものである。
|