研究課題
基盤研究(C)
インド文化の一大特質をなす雑多・異質な諸思想を包含しようとする「包括主義」ないし寛容精神が、論理的思考を重視するニヤーヤの学問伝統においてどのように展開したかを文献実証的に跡付けるために、ジャヤンタ(9世紀後半=J)の主著『ニヤーヤ・マンジャリー』(NM)その他の諸文献を精読して、NMが言及する万教同根観の分析並びに関連する諸問題の解明をなすことが本研究の主題であり、以下のような研究成果が得られた。(1)NM第4章に展開する「すべての宗教(聖典)の権威を認める」という見解(sarvagama-pramanyavada)、及びその一類型である万教同根観(全宗教のルーツはヴェーダである)を、NM全体の文脈とJのニヤーヤ学観との関連から分析し、Jはヴェーダ聖典権威論証をニヤーヤ学の趣意としつつも、その論理的証明の限界を自覚しており、それが万教同根観などを否定せずに紹介するという、調停者的な態度を示す大きな理由の一つだったのではないかと推定した。(2)ヴェーダ権威論証上重要な概念mahajanaparigrahaについて検討し、Jが理解する意味は「立派な人々(=法典の秩序を遵守する人々)による受容」であることを論証し、「大多数の人々による受容」という量的な意味合いも含まれているというChemparathyの解釈を退けた。(3)Jのヴェーダ聖典権威論証と深く関係するクマーリラの『シュローカ・ヴァールッティカ』「教令章」における真知論の箇所の主要部分を解読した。(4)このほか、関連する諸問題の解明として、NMにおける「六つのタルカ」の意味内容の解析、および初期ニヤーヤの論理学の展開に関わる「upanayaの意義付けとlingaparamarsa」の分析を行い、その成果はそれぞれ論文で発表した。
すべて 2005 2004
すべて 雑誌論文 (6件)
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