研究概要 |
本研究は,階唐以前の中国仏教史の実態を知る上で不可欠な『浄住子』全31章の平易な日本語訳と詳細な注釈を作成することを中心課題とする,文献学的基礎研究である。対象となるテキストは南斉時代を代表する篤信の皇族,蕭子良(460-494年)によって編集され,唐の道宣撰『広弘明集』に収録されている。三年間を研究期間とする研究の初年度として,本年は,最も基礎的な作業として,まず最初に,原文の電子化をほぼ全体にわたって成し遂げた(ただし異読の入力問題と入力結果の校正は今後の課題である)。次に,関連諸資料を蒐集整理し電子化することと,そのための基礎的入力編集作業とに,多くの労力と時間を割いた。具体的に言えば,『浄住子』三十章のうち,約三分の一弱の分量に関して,現代日本語訳と関連注釈を作成することと,入力整理の原則と方法論を策定することを当初の目標としていたが,作業を実際に様々に進めてみた結果,訳注の中に引く関連諸文献の性格を,当該文言の直接的な典拠・類例・当該文言を引用する後代の他文献など幾つかに分類して表示すべきであるという結論に達した。この上に立って,本文のほぼ全体にわたり直接的な典拠の推定を行ない,さらに類例と当該文書を引用する後代の他文献の整理に関しても,全体の半分を超える分量についてこれを実行した。そしてこれらの作業の上にいくつかの章の和訳を作成した。本研究は,採択が秋になってから決定されたことに伴い,研究遂行手順に最小限の修正を加える必要は生じたものの,おおむね予定通りに近い作業を初年度として遂行し得,目下それらを整理中である。次年度には他の関連諸文献の分析を継続調査することによって,訳注のうち,注釈部分を完成に近づけることと,そして残りの部分について日本語訳を作成入力することを実行したい。
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