研究概要 |
今年度(平成16年度)は,昨年度までに集めた資料を基にして,『インド仏教文学文献研究史』の原稿を増補改訂する作業をかなり進めた。執筆の最中に,直接サンスクリット語写本を見て作品の内容を確認する必要を感じることが多いため,昨年度に引き続き,労力を惜しまずに出来るだけ多くのサンスクリット語写本を入手しようと努めた。今年度は新たに,サンスクリット仏教文学関係の諸作品のネパール写本を,東京大学図書館において1147枚,東北大学図書館において612枚,入手した。これでもまだ十分とはいえないが,昨年度までに得た写本と合わせると,かなり多くの写本に基づいて研究が進めることができるようになった。実際に写本にあたって研究することは,単に他人の受け売りではない新たな知見を,現在執筆中の原稿に盛り込むために,どうしても必要なものである。特に『スバーシタ・マハーラトナ・アヴァダーナマーラー』,『アヴァダーナ・シャタカ』,『ディブヤ・アバダーナ・マーラー』,『アヴァダーナ・カルパラター』,『ジャータカマーラー・アヴァダーナ・スートラ』の作品について,写本研究を進め,チベット語訳があるものはチベット語訳も参照して,テキスト校訂を行った。地道に文献の写本を読んでゆくこれらの作業から得られた知識は,インド仏教文学の全体から見れば微々たるものにすぎないが,そのような地道な作業なくして,インド仏教文学史をまとめることは出来ない。新たに得られたいくつかの発見は,今の原稿の執筆に生かされると同時に,来年度以降に学会で発表してゆく予定である。
|