当該科学研究の三年目であり最終年度でもあった今年度には、『無量寿経』の古訳である支婁迦讖訳『大阿弥陀経』のグロッサリー(詞典)と『大阿弥陀経』の校訂注釈本を引き続き執筆した。その詞典では、既存の辞書・研究書に出ていない語彙・語法、或いは採録されていても後漢より後の文献に拠るものを取り上げ、英訳を附し、さらに支謙訳『平等覚経』、訳者不明『無量寿経』、梵本(ネパール本とアフガニスタンで新たに出土した梵語古写本)及びチベット語訳に見られる対応する語彙を併記した。これらの作業はすでに『大阿弥陀経』全体の90%程度まで進んでいる。近い将来に正式出版を構想している。 グロッサリー・校訂注釈本作りと並行して、『大阿弥陀経』の訳注を作成し、その成果は、『佛教大学総合研究所紀要』に連載して発表している。今年度の発表で、全体の五分の四の訳注を終えた。 この他、「『仏典漢語詞典』の構想」と題する講演をワシントン大学(平成17年5月)、ベルリン・ブランデンブルクアカデミー(平成17年9月)で行った。その中で、『大阿弥陀経』の語彙の問題も論じた。この論文は、BSOASに投稿中。また平成17年8月にロンドンで開かれた国際仏教学シンポジウムにてUnderlying Languages of Early Chinese Translations of Buddhist Scripturesという題で発表。そこでも『大阿弥陀経』の問題も論じた。この論文は、五月に出版される中国語学の権威Christoph Harbsmeierオスロ大学教授の記念論文集に収録されている。
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